<その8> 大詰めの国会に希望はあるのか 2005.5.27〜
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枝野幸男議員への書簡 2005.5.27.
唐突の不躾をお許し下さい。私はシベリア抑留者の一人ですが、先日はご用繁多の中をわれわれの集会にお越し下さいましてまことに有難うございました。
その節先生の斜め前に座っていましたが、前政調会長の要職にあられた方のご来光は驚きであり、また大きな喜びでございました。ご関心を頂きましたからには是非ご挨拶をと、以下一筆に及んだ次第であります。
1、岡田ビジョンに喝采 私はこの度打ち出された岡田ビジョンこそ日本の針路を変える原動力であると大きな希望を懐くものであります。朝日新聞も社説で早速評価いたしましたが、この基本姿勢は排外的ナショナリズムの否定とアジア重視であり、従ってそこから生れる政策は @アメリカ一辺倒の見直し
この折角のビジョンをバラ色の夢に終わらせてはなりません。とりわけ戦争被害の清算は必須の政策で、これを済まさない限り岡田ビジョンは一歩も進まないのであります。“急がば廻れ“ 戦後処理という地味で気長な償いが結局は平和と繁栄への近道であり、各国の尊敬を博する行為に繋がるのであります。
2、「シベリア法案」をマニフェストに 戦後処理の推進が新政策の柱でありますから 「シベリア法案」 も他の償い法案と同様、マニフェストの一環として是非前面に掲げ、民主党の政策として進めて頂きたいのです。それにつきましては次項をご配慮下さいますようお願い申し上げます。 A 採決を期すため「議員連盟」のような推進チームの編成をお計り頂きたい。 B 上程された「シベリア法案」が不幸にして成立を見ず差し戻された場合は、これ を廃案とせず貴党で留保賜り、「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関 する法律案」と同様、再度上程の上採決を期してくださいますよう・・・・ 永田町座り込み行動でのアピール 2005.6.23. 私の言いたいことは二つです。 一つは国会議員の方々に申し上げたい。 およそその国の兵士が、その祖国に向かって、抑留中の未払い賃金を払えなどと座り込みをしている国が日本の永田町以外にありますか? あったら教えて頂きたい、何処にもないでしょう。なぜか、 それぞれの母国はその兵士に、実に手厚い補償をしているからだ。赤紙一枚でこき使い、要らなくなれば弊履の如く捨てて顧みない、何一つ酬いない非情で、薄情な国が世界の何処にあるか、あったら教えて頂きたい。 「シベリア抑留」をこのままで、議員各位は二度と国を愛せとか、愛国心がどうの こうのと奇麗事は口にしないで欲しい、この国の政治家に愛国心を語る資格はない。 まもなく二つの「シベリア関連法案」が各位の目の前に出されるはずだ。一つは政府与党の旅行券で済まそうとする 「馬鹿にするな法案」、もう一つは野党からの 「未払い賃金に代わる特別交付金法案」だ。どちらが正しいかは真面目に審議すれば誰にでもわかることだ、日本人であるなれば・・・・。 これは与党だから賛成、野党だから反対の党利党略の問題ではない、日本の、日本人の正義と未来を問う重大な審議である。世界が見ている、歴史が見ている。どうかこれらに恥じない選良としての良識を示されたい。 二つ目は相沢さんとその一統に申し上げる。 「シベリア抑留」はとうとう来るところまで来てしまった、もう我々に後はない。相沢英之さん、聞こえますか? いろいろ意見は違っても、シベリア仲間の名誉と顕彰を求める気持ちは同じ筈、貴方がたは国にゴマ化されて旅行券で終わりにするおつもりか?それとも皆が喜ぶ賃金に代わる補償をお望みか? この際ははっきり態度を示す最後のチャンスであります。W相沢も最後に協力してくれたから補償が取れた“ と仲間が喜ぶか、W相沢は結局政府の犬であり、抑留者の敵であったWと末代かけてそしられるのか、ここは思案のしどころだ。 願わくば 運動の原点に立ち帰り、戦友の誰しもが喜ぶ道を選ばれたい、私はあなた方の最後の変身を、心から期待する。 自民党5役了解事項と自民党法案への私見 2005.7.3.
1、支給対象者をはっきりされたい A 今回5万円相当の旅行券支給の」対象者は、平成2年度と同様戦後強制抑留者省くのか、または省かないのか どうか。 *国はこれまで実に姑息にこれらを区別した実例があります。まずジャブで叩いてください。 2、所要額について 今回事業の所要額は200億円程度とし、残余を国へ返納と言うがこの考え方は”初めに200億ありき” であり、そのうえ理論的根拠を欠いた実に中途半端なものである。基金取り崩しが合法として、半分を認めようとするのなら全額でも何ら問題はない筈で、オール、オア、ナッシングを堂々と主張できないでは天下の自民党の名折れではないか。400億円すべてを返し、新たに充実した有効な使途を講ずるべきである。 *与野党連合で財務省を説得されたい、400億プランですべてが解決します。 3、同じ金なら有難く拝領できる方法で 今回は自民党折角の発議を尊重し400億全額を投入して真摯に解決の道を審議すべきである。本件は国家の大事であり 与党がどうの、野党がと あい争う党利党略の問題ではなく、立法府の良識と誠意を披瀝すれば充分解決可能な範囲である。同じ血税を頂くのであれば、抑留者のすべてが心から有難いと押し頂く方法で拝領したい。そして問題をあとに残さない円満な大団円にしなければならない。 4、了解事項9項通りの良き結末を期待する 了解事項による処置はご苦労さんの見舞金であって、国際法に基づく未払い賃金若しくはそれに代わる交付金ではない。従って自民党法案は問題の根源を断絶できるものではなく、依然未解決のままである。そうではない完全解決、例えば226億円規模の民主党法案を盛り込むことにより、すべてが可能になり、三方目出度く終わるのである。そのとき初めてこの一政党内の見解に過ぎない9項は抹消を免れる。 *民主党法案の見込み額300億円は正味226億で可能 運動の灯を消さないために・・・・ 2005.7.6.
「シベリア関連」の与野党両案が上程され、型通りの過程を経て我々の法案が棄却された場合、次にとるべき方法として以下を提唱したい。
1、民主党を中心とする野党連合に法案を抱いて貰う要請をしよう 戦争責任とその処理を重視する「岡田ビジョン」に基づき、「シベリア抑留問題解決」を新マニフェストに掲げ、政権準備党の政策として引き続き法案を上程し、採決を目指して頂きたい。(枝野幸男議員宛書簡参照) そのためには
@生存者の激減と “早く死んだ者は死に損” の不公平を勘案し、帰還後死亡者の遺族に対しても相応の支給を追記すること。
A植民地支配の反省を掲げる「岡田ビジョン」の趣旨に基づき、外国籍元兵士に対しても日本人同様の支給を追記すること。
B法案の採決を期して有志有力の議員による推進チームの編成を懇請しよう。 Cこの法案は「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」のように何回差し戻されようとも、また自然の摂理により当事者が存命しなくなった場合においても引き続き上程され、政権交代の暁において目出度く採決を見るよう、格別の尽力を、老兵の遺言としてお願いしよう。
2、「シベリア立法推進会議」の看板は目的達成の日まで残したい 森羅万象すべては消え灰になるのは自然の摂理だが、この看板だけは高々と掲げ、一人でも二人でもこれに糾合し、次代の助力を借りながら次代に運動を継承してゆきたい。 3、10%カンパの呼びかけ 「シベリア抑留」は旅行券で終わりではない。宿願の未払い賃金は依然未解決のままであり、遺族や外国籍者には全くゼロの状態で、この不条理をこのまま泣き寝入りではシベリア老兵の名折れではないか、運動は継続されねばならない。そのため広く有志のカンパを呼び掛けたい。 @ 今回の受給者・・・・旅行券の10%、一口1万円。ただし何口でも可。 一般・・・・・・・・・・・随意髄額。 A 報知の方法はマスコミの好意に依存。 B 振込口座と監査機関の設置。 4、事業計画 基金、募金の出来高により出来るだけのことを世話人会議で考える。
朝日新聞 <終戦>特集応募 「シベリア老兵」の終戦はいつ・・・・ 2005.7.27.
8月15日、小隊は満州国皇帝が逃げ出して藻抜けの殻の宮内府を警備していたが、偵察に出された私が吉野町の四つ辻で、突然耳慣れないラジオを聞いたときから首都新京は一変した。路地のどよめきがやがて大きな喚声に、爆竹が鳴る街々に手作りの青天白日旗や赤い旗などが、ドラの響きと人垣に重なって一斉に広場をめざしている。もう日本人が吸える空気もなさそうな街角で、やっと拾った馬車にも石が飛び、一目散で逃げる後ろから罵声が追ってきた。
報告を聞き終えた隊長から “誰にもしゃべるな” と口止めされたのに私はうっかり大事を漏らしてしまったのだが、“降伏した” と聞いたある兵長の言葉が忘れられない。“そうか、やっぱり。しかし案外もろかったのうアメリカは・・・・” 忠勇無双の兵士に神国日本は不敗であったのだ。やがて負けたのは此方だと判って大混乱。やれやれと喜ぶ者、妻子を案ずる兵、腹を切ると半狂乱の将校、盗み、口論、脱走と 赤裸々な悲喜劇の舞台となった王宮は、文書を焼く黒い煙と炎のように赤々と咲くカンナの群れで落城さながらの姿を呈していた。
戦争は終わったのだ、もう国のために死ぬ必要はない という嬉しさに有頂天の私を冷たく打ち砕いたのは大本営命令であった。“前面の敵の管理下に入れ、従わぬ者は罰せられる” かくしてソ連軍に投降、スターリンの強制連行、そして「シベリア抑留」へと敗残関東軍の戦後はここに始まり、今日まで未だ戦後は終わっていないのである。 その総数60万、犠牲6万とも9万ともその数すら明らかでなく、事件の真相と共に謎に包まれた「シベリア抑留」は、開闢以来の不祥事として後始末もされないで放置されている。
飢えと寒さと重労働、私の抑留3年は地獄であったが、そのツケを清算するのは誰か、奇妙なことにソ連ではなく、祖国日本を新しい相手として争わねばならない所に「シベリア老兵」の苦悩がある。地獄ではあれ奴隷ではない我々には国際法によって抑留中の賃金は保証され、それを受け取る権利がある。支払責任は通常労働の利益を得たソ連にあるのだが、1956年の「日ソ共同宣言」で我が国はソ連への請求権を放棄したことによってソ連は支払の義務を免れている。その責任上当然我が国が支払うべき を未だに国は払わないのである。
また国際慣習法により捕虜の諸費用はそれぞれの母国が負担しており、世界の国々は勿論我が国でも南方や中国からの帰還捕虜には賃金を払って「シベリア抑留」のみに支払わない。このような不条理も漸く野党共同の合意を得て補償法案が上程され、今国会で解決を見ようとしている。たとえ象徴的な小額であれ賃金に代わる趣旨が明らかであれば了とすべきであろう。
与野党はこの国民的課題を真摯に受け止め、いやしくも党利党略に走ることのないよう成案を期されたい。また「シベリア抑留」が国と国民の身代りとして国体護持と役務賠償の苦難に耐えた関東軍の名誉を回復し、60万兵士を踏み台に本腰入れた四島返還を切望する。 26 2005.7.30. 前便から早や半歳、炎暑の候に漸くお知らせに値する良いニュースがあります。
1、「戦後強制抑留者に対する補償法案」 が国会に再上程 1)郵政民営化の嵐が過ぎた衆議院に野党3党の法案が7月22日に提出されました。 2、自民党の旅行券法案 は・・・・ はじめ20万円が10万円の旅行券に下げられた自民党法案は公明党との協調が進まず遅れていますが、会期末すれすれに出して審議もほどほどに一気に採決したい作戦のようです。 3、今後のシナリオと与野党のバランス 衆参とも議院運営委員会が総務委員会に付託し、与野党の委員が審議してどちらかが採決され、本会議で決定されます。8月13日までにシナリオ通りに進まない場合は継続審議若しくは廃案となります。運命を別ける総務委員会のメンバーは次の通り <衆院> 委員長を除き 与党 22名。(自民19+公明3) 野党17名。(民主15+共産1+社民1) <参院> 委員長を除き 与党 13名。(自民11+公明2) 野党 11名。(民主9+共産1+社民1) *両院とも僅かの差、決して手も足も出ない開きではない。 4、私の見通し 二つの法案はその内容といい道理の正しさも誰が見ても野党の方が優れていますが、残念ながら永田町は数の世界です。結局は多数に押し切られて10万円の旅行券で万事は終わりとなる公算が大でしょう。 5、我々は負ける戦いをやっていたのか? 1) この半年は水面下の困難な事前折衝の連続で、法案を通すには俗に言う根回しが必要で、何とか与党側と折れ合って合意点を見出そう、与党の先生も人の子 役人の言うままになる人ばかりではないはずだと、提出人の鳩山さん以下に随分ご努力頂きました。また自民党にべったり依存する相沢派にも協力を呼び掛けましたが相互不信の溝は深くとうとう纏まらず、与野党全面対決の形となった次第です。 2) 戦場となる総務委員会では堂々の論陣と傍聴、参考人招致など審議の進行に合わせて全力を傾けたいと思います。ローマは一日にして成らず、たとえ今回は不採決であっても次への大切な闘いです。そのことは次項で・・・・ 3) “あと少しで皆さんあの世行きだから、もう暫くの辛抱だ と喜んでいたのに、どうもそれでは済みそうもないぞ” と渋い国から旅行券を吐き出させたのはこの運動の成果です。しかし旅行券はご苦労さんの慰労に過ぎず、未払いの賃金ではありません。本来は両方出して当たり前であり、これを払わない限り問題の解決はありません。 6、「シベリア法案」の灯を消してはならない 与党の反対で不採決になろうとも、引き続き何回でも上程下さるよう野党連合に依頼いたします。「東アジア共同体」構築のためには過去の反省と償いが先決とする「岡田ビジョン」の一環として 「シベリア抑留の解決」をマニフェストに加え、政権交代の政策として取り組んで貰う構想です。 1) 野党連合で毎回上程されている「慰安婦補償法案」が良い例で、当事者は一人も居ませんが、熱心な女性議員を中心に何回棄却されようとも出し続け、その都度支持を広げています。 2) 老兵も年には勝てず、またカネの掛かる戦いは無理になってきましたが、理解ある政党、議員また支援団体の広い助力を得て運動を次代に繋ぎたいと考えます。 3)八方ふさがりの自民党天下がいつまでも続くとは思えません。政権交代のその日には念願達成、そして「シベリア抑留」の実相が明らかにされることでしょう。 4)そのためには実情に合った法案の改正が是非必要で、特に「早く死んだ者は死に損」の不公平を防ぐため、帰還後死亡者の遺族への補償と外国籍条項の撤廃は不可欠であります。
ご健康を祈念し共に喜びの日を待ちましょう。 * いつもカンパを有難うございます。この運動は会員制をとらず、任意のカンパで運営しております。「戦後60年」の今年は天王山で乏しい中全力挙げて補償立法に取り組んでいます。随意随額のご協力をお願い申し上げます。 |
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