第3章
  2、枯蟷螂 三角でもの 考える

  <その4> 月に群雲、花には嵐                    2004.7.2〜
                                        

中村哲治議員への書簡 左藤 章議員への書簡
北側一雄議員への書簡 朝日新聞へ7つの要望
迷路に踏み込んだ大阪

衆議院議員 中村哲治氏への書簡           2004.7.2.

 今頃は湧き上がる大勝利の歓声に包まれてお喜びのことと存じ上げます。

 この手紙を家人に10日に投函するように申しましたのは、私9日に大腸がん手術のため病床からのエールとなったからであります。順調なら月末にはカムバックできるのですが、以下の件どうしても先生の腹中にお含み頂きたく、一筆お願いに及びましたる次第、どうかより良き方策をご検討賜りますよう懇願申し上げます。

1、遺族及び外国籍兵への支給のお願い

 この件は多くを申し上げるまでもなく、老兵たちの強い願望であり、部内に於いてこの二つの失権を巡り、かなりの論争があり、未だ潜在する問題であることは、先生もつとにご高承のことと存じます。上程の直前に至り “巧緻より拙速を・・・・” “とにかく風穴を開けるのが先決” との東京側意見を尊重して纏まり、附則3条を追記して同意を見たものであります。

 こんな話もありました。韓国朔風会の一行が国会前の座り込みを終え、宿舎での懇談の際日本側より “この度の法案では外国籍を諦めては貰えないか・・・・” と苦衷を明かした所、“一心同体を誓い合った同志が今更何を言うか” と深夜の激論になり、これを制したのが李 炳柱会長の鶴の一声でありました。“韓国兵のために日本の戦友が不利になることを私は出来ない。”

2、補償法案の泣き所

 私はいろいろの不満はあれ、現実的に可能性のある東京路線を選んだことは正しく、幸い先生方の一方ならぬご尽力を得て上程されたことを喜びとし、感謝致しております。以後再上程された後は神のみぞ知るところでありますが、私は是非起草者の一人であられる先生に知って頂きたいことがございます。審査の途上で党利的かつ批判的な与党議員の辛辣な質問に備えるためにも「補償法案の欠点」を直視し、予め対応準備のご検討を願いたいのであります。

3、計算基礎の不適切

 これは実務者である衆議院法制官の公正ならざる資料提供によるものであろうと存ぜられます。生存率請求率において実に実勢に乖離した数字が提供されているのであります。( 添付の拙稿「後世史家の評価に耐える法案を・・・・」ご参照)

 結論的に申し上げれば予算的には見積1000億の範囲内に遺族も外国籍も充分包摂が可能なのであります。*外国籍は韓国帰還兵約500名、現在生存者25名。

4、自民党立法との比較

 抑留者と民主党の二人三脚による法案上程は漸くにして頑迷不霊の自民党をも動かす事態となり、急遽奇策とも言うべき「財団基金」取り崩しの立法化を準備するに到りました。この禿げ鷹法案はその理念において、本質において民主党法案とは比較にもならない代物でありますが、一面数を頼んでの俗論は侮りがたく、これに対しては更に内容の充実をはかり、歴然たる差をつけることが有利であろうと思うのであります。

 もし可能であれば法案の一部を変更し、拙稿を下敷きに幅広い遺族層をも恩典に浴しますと、運動の盛り上がりは一段と上昇することが顕著であり、予算の内で花も実もある法案に仕上がるのでは と考えるのであります。

5、再上程が至上命令

 これらはしかし、至上の条件である再上程を僅かでも損なうものであっては本も子も無くすことで、決して無理にとは申しません。政治力学に疎い我々の望みはあくまで出来る範囲での話であり、本末転倒の愚は避けねばなりません。実はこの件、長妻さんにも仲間にも内緒の事で、どうか先生ご一存に留め置き賜りたく。

6、次世代への継承について

 私は当年83歳、そろそろ年貢の納め時でしょうが、出来る限りのことはやり終えた心境で、目の色の黒いうちに決着を見なくても“ ダメ関東軍の中にも死ぬまで国に逆らった愚直が少しは居たらしい” と語り継がれれば男子の本懐と覚悟しております。

 遺族の不幸以外にも、無念や現地で仆れた戦友の顕彰も不充分のままで、遺族公務扶助料の制度があるものの申請制であり、検死の保証を要することから果たして何割が支給されているのか。「シベリア抑留」に対する冷酷非情な扱いは国と大和民族永遠の恥部となりましょう。 どうか次代への継承をよろしくご依頼するものであります。

 新しい政局でのご活躍を祈りつつ・・・・

   衆議院議員 左藤 章氏への書簡            2004.7.5、

 参院選たけなわ、先生には体が幾つあっても足りないご多忙のなかを先日は「近畿の会」の方にお電話を頂きました由、まことに有難うございました。

 おそらく「平和祈念事業基金解体に伴う自民党法案」を巡るお話であろうと思いますが、私はこの立法起草もしくはそれに類する大役を先生がお引き受けなさったのでは・・・・と、拝察いたしております。

 それなればお耳に入れたい事、また是非ご配慮賜りたい点あり、もう一度非力なアウトサイダーの声を聞いて頂きたく、偏にお願い申し上げます。

1、割り当て配分がおかしい・…

去る平成15年12月19目、自民党五役より政府に対して要望をみた「旧ソ連等抑留者間題、恩給欠格者問題の解決策」の骨子は、シベリア組・…15万人X 20万円= 300億、恩欠組・…20万人X 1O万円= 200億、引揚組・…ゼロ、とされていますが、別にハコ物が75億と、トータルでとても400億円では足りません。この辺りはどうなるのでしょうか? 相沢議員は当初10万円だと言っていましたが、まさか20万は掛け値ではないのでしょうね。

2、シベリア組の恩欠は恩欠ではないのか・…

慰労金として一人十万円を支給される者は、生存する総ての恩給欠格者として頂きたいのです。

原案のままでは戦後強制抑留者、いわゆるシベリア抑留者は排除されていますが、恩欠者は南方、中国であれ シベリアであれ恩欠者であることに変りはなく、これでは誠に不条理かつ不公平であります。シベリア抑留者であり恩欠者であれば当然両方を合わせた30万円の支給であることを明らかにして頂きたいのです。

3、シベリア抑留に対する自民党本来の熱い心 

 18年前を思い出してください。昭和61.5.15.超党派成立を目指した斉藤邦吉、加藤六月議員起草の「被抑留者等に対する特別給付金の支給に関する法律案」は、天下党としての権威と温情を兼備した格調の高い法案で、生き残りの当人の他にも遺族7割支給という立派なものでありました。(1500億規模)。

その提案理由に、“・・・・シベリア抑留者の方々又はそのご家族に対しましても援護の措置も不充分であり、またいきわたったものではありません。南方地域におきましては日本政府により労働報酬が支払われておりますが、シベリア抑留者に対してはソ連政府はもとより日本政府からも労働報酬は一切支払われた事実はないのであります。以上の事実にかんがみまして、国としてその労苦に報いるため、特別な給付金を支給すべきであると考えます。” とあり、これが自民党の本来の姿ではないでしょうか。

4、今度の自民党立法は

 提案理由に変わりがなければ是非18年前そのままの法案を上程願いたい。 「日ロ平和条約」締結を間近に控え、領土問題を有利に展開するためにも「シベリア抑留」は避けて通れない問題であることからも、この法案での解決は英断を以って成立させるのが高度の政治性であろうと思います。

 しかし、諸般の事情からお気持ちは変わらないものの現実は厳しく、懐具合の寂しさはよく理解いたしております。我々は金銭を言っているのではありません、欲しているのは大義名分と根源から切り取る解決で、例えば次の3点が充たされるならば 満足とする愛国心は持ち合わせておるつもりです。

  @ 総理大臣が謝意を示し、「シベリア抑留」の歴史的功績に感謝すること。

  A 交付金の性格が強制労働の未払い賃金を意味するものであること。

  B 遺族、外国籍兵士への配慮

5、結び

 多年の懸案がようやく落ち着く所へ落ち着こうとしています。シベリア抑留はこの大団円を含め後世に長く語り継がれることでしょう。しかし、“初めに400億円ありき” の残飯処理法案では与党立法としていかにも見苦しく、品位に欠けはしないかを恐れます。どうか歴史家の批判に耐え得る収束にご尽力賜らんことを切望いたします。

 私 宿痾にて8日に入院いたすことになり、拝眉を得られなくなりました。多田代表が参上いたしますが、推進会議の願いとしてこの書簡を認めました。ご披見下さいまして最小限の要望をお取上げの程、偏にお願い申し上げます。

公明党政調会長 北側一雄議員への書簡            2004.7.25.

暑中お伺い申し上げます。

私は昨蝋 矢野博之秘書を経て、要望をお取次ぎ頂きました者でございます。

 「シベリア抑留」はその後内外の広汎なご理解の下、いよいよ秋の臨時国会において国民的審議を受ける運びとなりました。民主党主宰の野党共同法案と並行して自民党提案も上程されるとか、いずれにせよ多年の懸案を一挙に解決を・…との動きは老兵一同の切望する所であり、大きな期待を持って見守っております。

史上類を見ない民族の大拉致事件である「シベリア抑留」とは一体何であつたのか。またその解決は・…これは与党だから野党だからという次元ではなく、日本として、日本人として真摯な検討を要するのは申すまでもないところであり、特に今回はキャスチングボートを握られる公明党の立場が重要かと考える次第であります。

私はこの五月にソウルで逢った郭 貴勲氏のことを忘れることができません。「被爆者はどこにいても被爆者」を訴えるこの人は、“無理に日本を好きになれと私は言わない、しかし公明党だけは別だ。この党は弱者に耳を傾け、助けてくれたのだ。“ を熱っぽく説くのであります。

なるほど大阪高裁における国の上告断念は貴党、特に関西公明党の義侠、義挙が原動力であったとは知る人ぞ知るところであります。人道と道理の党、弱い立場に立って考える是々非々の党。私はこの公明党が「シベリア抑留」の真実糾明と冷酷非情な国の仕打ちに無関心、無理解であるとは考えられないのであります。

特に先生はそんなお方では決してない。昨年10月9目に頂いたアンケートにも “戦争という悲劇が齎した問題として、一刻も早く被害者の方の救済措置を図れるように全力を挙げてまいります。" とのご回答は、我々直に体得できるのであります。

我々は長年のプロパガンダ不足を今に嘆くものであります。昭和54年頃の国会議事録を見れば、瀬野栄次飾、和泉照雄、塩出啓典の公明三羽烏が我々の切なる思いを訴え、「シベリア抑留」の先駆的質間を重ねていただいております。この熱い関係がなぜか疎遠になったのも我々の努力不足でありましょう。

 つきましてはこの度の正念場を控え、これら反省を踏まえて暫時の時間をお与えいただきたく、お願いに及ぶ次第、要望事項は別紙の通りで、この歳になって今更ゼニカネの間題でもありません、広くは国益のため、道義のため、棄兵棄民の汚名を歴史に残さないためにもどうか老兵の声をお聞き賜りたく、切にお願い申し上げます。

  北側一雄先生へのご要望レジュメ   

1、「野党共同補償法案」のあらまし

2、自民党五役による「平和祈念事業基金取り崩し法案」のあらまし

3、両案審議の前提である「シベリア抑留」とは・・・・について充分の論議が必要。

 「シベリア抑留」は終戦の詔勅が発せられた戦後の大量拉致事件であり、ソ連への役務賠償のため、また国体を護持するため 国と国民の身代りとなった尊い犠牲である。

4、国際法に基づく強制労働の未払い賃金総額は7兆円を下らない。誰が何と言い逃れようと、世界の文明国中 未払い賃金若しくはそれに代わる補償を母国が払わず、見殺しにしているのはシベリア捕虜だけ。

5、同じ日本軍でありながら南方や中国からの帰還捕虜には支払い、シベリアには払わない。石破さん、自衛隊の諸君はこの不条理をどのように考えるでしょうか?

6、未払い賃金の支払い義務国はソ連か、日本か? どの国も母国が責任を持ち、問うまでもなくこれは日本に決まっている。法的には1956年「日ソ共同宣言」6項は “日ソ両国はすべての請求権を相互に放棄する” とし、抑留国ソ連に支払責任はない。

7、このような母国による未払い賃金の着服は、1949ジュネーブ条約第6条に著しく違反するものであり、これはまた、国際法遵守を誓った憲法第98条に悖るものである。

 “ 締結することが出来るいかなる特別協定も、この条約で定める捕虜の地位に不利な影響を及ぼし、又はこの条約で捕虜に与える権利を制限するものであってはならない。”

8、国の理論破綻

 @ “日本国民の個人として有する請求権(未払い賃金)まで放棄したわけではない” と言い張って補償責任を回避してきた国が、その主張を180度変換し “ すべてを放棄” と遂に本音を吐いた。(平成13.10.11.東京高裁オランダ捕虜訴訟、及びカリフォルニャ米兵捕虜裁判)

 A “ 補償するのはソ連であろう” と現職大臣二人が時代錯誤答弁

    総務大臣片山虎之助、厚生労働大臣坂口 力。

9、この国会審議が最終的解決であるための最低条件

 @ 交付金の性格が強制労働による未払い賃金を意味するものであること。そうでないと問題の根はいつまでたっても切れはしない。

 A カネがないから支払えないのであれば総理大臣はその旨の謝意を示し、「シベリア抑留」の歴史的功績に対し、国民を代表して感謝、顕彰すること。例えば国民記念日「シベリア抑留の日」の制定 (8月23日)

10、来るべき日ロ平和条約に・・・・

 「シベリア抑留」の尊い犠牲を踏み台に、四島耳を揃えての即時返還を強く迫ること。そのためにも払うべきはきちんと払い、官民一致の気構えが何より必要であります。

3党の見識ある判断を歴史が、また世界が求めています。

朝日新聞論説委員への七つの要望         2004.7.30.

 この度はオピニオンリーダーとして日本良識の最前線を担う方々とゆっくり意見を交わせたい、ご理解を頂きたい、その良い機会であると考えます。いくら社会部あたりが好意的とはいえ、肝心の中枢が18年前と変わらないでは先々希望がありません。そこで当時の社説を再読しましたが、やはり時代を感じますね。水上諮問常識論の影響の大きさでしょうが、所詮「平和祈念事業」という弥縫策が何の解決にもなっていないことを現在が物語っています。貴社社説「戦後処理で筋を誤るな」 の論旨を要約すると、

 “戦後処理には外国人と日本人の二つの場合があるが、後者の新たな個人補償はもはやなすべきでない。” とし、その理由として以下の3点をあげています。

 @ 多かれ少なかれ全国民が戦争被害者であり、シベリアに補償をすれば新しい不公     平を生み出す。

 A 数兆円の巨額

 B シベリアには曲がりなりにも施策がなされている。

戦後処理という大きな風呂敷は財政上の分け方であり、これに味噌もクソも構わず包み込むから手がつけられなくなるのであって、それぞれ水と油ほど性格が違う案件を一括で処理しようとしたのが間違いのもとでありました。

1、シベリア抑留の特異性

 足立純夫氏の言ですが、「シベリア抑留」は単なる戦争被害者ではなく、戦後の国際人道法上の犠牲者であり、国際法に基づく未払い賃金の問題は、そもそもが国の裁量如何に係わらない実定法的問題であります。

2、未払い賃金の支払人は・・・・

“ 捕虜の労銀は支払われるべし” の支払責任者は誰か? 日本か、ソ連であるのか、それさえ判れば万事は解決ですが、その答えは既に明確です。文明世界のすべてで母国が払い、日本兵でも南方、中国帰還の捕虜は日本政府が支払い、受け取っていないのは世界広しと言えども 「シベリア捕虜」だけであります。

また「日ソ共同宣言」第6項において日本から請求権の放棄を受けたソ連に法的支払義務はなく、その責任は日本国以外にありません。

3、国の理論破綻

 “ 放棄したのは外交権、外交保護権であって、国民が有する個人の請求権(未払い賃金など)まで放棄したものではない。” と長年強弁して支払責任を回避してきた国は、遂に180度主張を変え “すべて放棄” を認めるに到りました。(平成13.10.11.東京高裁のオランダ捕虜訴訟、及びカリフォルニャ米兵捕虜裁判)

 “補償するのはソ連政府なんですね” と初めて国会で答弁した現職大臣二人の重大な誤謬とその立証責任。(総務大臣片山虎之助、厚生労働大臣坂口 力。)

 国による未払い賃金の着服は1949ジュネーブ条約第6条の明らかな違反であり、国際法を誠実に遵守することを誓った憲法第98条に著しく悖ります。


4、数兆円とは とんでもない

 我々は謙虚であり、今のところ片時も国を愛する心を失ったことはありません。また自衛隊の諸君や北朝鮮拉致被害者のような優遇を一度も望んだこともなく、今回も数兆円の僅か1%にも満たない象徴的な額の提示に留めています。内気な老兵は今回を最終的解決の場とするための最低条件として、以下を提案しています。

@ 交付金の性格が強制労働による未払い賃金を意味するものであること。そうでないと問題の根がいつまでも残るからです。

 A カネがないから支払えないのであれば総理大臣はその旨を公式に謝り、「シベリア抑留」の歴史的功績に対し国民を代表して感謝、顕彰を行うこと。 例えば国民記念日として「シベリア抑留の日」の制定。(8月23日が適当)


5、曲がりなりにもなされた施策とは・・・・・

 私が受けた施策とは10万円と銀杯のみ、これは未払い賃金封じの誤魔化しであって、寸毫の真心も感じられない措置であります。また国が言う軍人恩給の給付もなく、引揚者に対する補償金も「シベリア抑留者」は逆に疎外されて交付資格を外され、其の他何一つ措置は執られていないのが現状であります。


6、司法見解への共感を・・・・

 社説はまた台湾兵訴訟における司法の政府、国会への要請を好感し、同意を表していますが、「シベリア抑留」裁判においても再度に渉り同様の理解が示されています。“・・・南方から帰還した日本人捕虜は、国から労働賃金の支払いを受けることができたのに、シベリア抑留者は、過酷な条件の下で長期間にわたり抑留され、強制労働を課せられたにもかかわらず、労働賃金が支払われないままであることは、不公平な取り扱いを受けていると感ずることは理由のないことではないし、国際法上、労働賃金の支払いを確保すべきことが求められていることは、国際法の確定するところから明らかである以上、シベリア抑留者の労働賃金の支払いを可能とする立法措置が講じられていないことについて不満を抱く上告人らの心情も理解し得ないものではない。” (平成9.3.13.最高裁) その立法府への法案がいま上程され、国民環視のなかで審議されようとしています。


7、老兵最後の遺言

 これだけは目の色の黒いうちに見定めておきたい。来るべき日ロ平和条約には「シベリア抑留」の尊い犠牲を踏み台に、四島耳を揃えての即時返還を強く相手に迫って頂きたい。そのためにも払うべきはきちんと払い、官民一体の気構えが何より必要であります。“スターリンのしたことであるとは言え、この非人道的な行為はまことに弁明の余地もないことで遺憾に堪えません。しかし、気の毒なのはビタ一文手にしない捕虜の諸君であって、貴国は失礼ながら一銭も損をしておられないではありませんか” と相手に冷笑されないためにも・・・・。

   迷路に踏み込んだ大阪                  2004.9.7.

1、いま欠かせない運動の課題

 10月の法案上程を目前にして私は、可能不可能を問わず良い結果を得るための最善を尽くしたいと思います。永田町から遠く離れた大阪にあって、何が出来るか、いま誰に何を訴えるべきか、後に悔いを残さないようみんなで考えたいのです。

 私は本件に関係する地元議員へのロビーイングこそが最優先課題だと考えます。

1)、法案の審議が予定される衆議院内閣委員会の委員である吉井英勝議員(共)に採決への尽力を訴えるため、8月18日石元事務局長と共に訪問、依頼した。

2)、8月24日、永田町に下屋敷世話人(福岡)と同伴で、関係与野党議員16室を訪問、幸い在室の山口重男、吉川春子の両議員に面談、協力を懇請した。

3)、9月4日、衆議院副議長中野寛成議員に面談。以後の進め方、河野洋平議長面談への橋渡しを依頼、第2法案の了承等について懇請。

4)、公明党政調会長北側一雄議員に7月25日以来再度に亘って面談申し入れ、遺憾ながらいまだ回答を得られず。

5)、其の他マスコミ対策の重要性に鑑み投稿すれども採用されず、朝、毎、読の3大紙論説委員室への面談申し入れも梨の礫で進展を見ず、頓挫の状態。

 これらは8月23日東京での世話人会議に於いて協議、確認された基本線で、「未払いの会」にもすべて連絡の上推進している。

2、左藤 章議員へのアプローチ

 以上にも増して緊急を要するのは衆議院総務委員会の理事であり、現在与党作成中の「平和祈念事業特別基金解散法案」に重要な関わりを持つ地元左藤 章議員への接触であります。私は

1)、7月5日書簡で@ 恩給欠格者交付金からシベリア抑留者を除外する原案に強く反対し、改善を依頼。A 本件解決に必須の2要素を法案に加味されるよう進言。

2)、引き続き8月28日書簡で、@ アンケート回答への御礼A 第2法案の予告 を述べ、再度の面談を申し入れました。

3、次回面談の目的

@ 与党法案の進行状況を探りたい。

A とても辻褄が合わない400億の配分を聞きたい。

B シベリアへの20万は恩給受給者も含むのか、どうか? の確認。

C 恩欠10万支給の対象となるよう再度依頼。

D 議員連盟が立ち上げを決議した「日ロ調査委員会」とは・・・・

E 「第2法案」の説明と立法化の可能性について。

四、左藤面談の意外な障害

1)、 以上は運動の大目的を同じくする人にとり ご異議ないものと思います。ところが現実は意外に難しく、袋小路の状態にありますが、その原因は私の行動を個別交渉とし、会の運動として認めたくない「近畿の会」執行部の誤解にあります。特に7月5日の東京宛FAXで“・・・事前に会との打ち合わせがない個人の個別交渉は避けることを決めた。” として私のロビーイングに協力しないとの表明がありました。

私はこれまですべてを事務局に相談し、「近畿の会」の名で面談を申し入れ、何方かの役員を同伴し、その報告を欠かしたことはありませんが、これを個別交渉だとは夢にも考えたことがありませんでした。左藤議員との始まりも2003.12.4. のアプローチ以来、12.13. は石元事務局長と共に第1回の面談に成功、以後今日がありますが、何処を指して “会との打ち合わせがなく・・・・” であるのかのお尋ねをし、この文言の取り消しを申し入れましたがご返事がありません。

2)、どうしても個別だとして同調されないは勝手ですが妨害は困ります。事前工作をしてやっと面談に漕ぎ付けても左藤議員の返事はT代表に行き、私はいつも蚊帳の外です。(議員には会から2万円の献金をしており、議員はスポンサーに忠実です)ご返事は池田の方へ とは内部不一致を思わせて具合が悪く、これが出来ない私はT代表の同行を望み、また作戦の打合せの必要を進言しますが拒否されます。今まで動こうともしなかった執行部が途中から割り込んでやってくれるのは結構ですが、いきさつを知って貰わねば困ります。“どうするか、誰が行くかは役員会で役員が決めることだ” が私を排除する理由です。

3)、T代表がどのような交渉をなさったか、これまで2回の面談報告はいずれも評価の低い内容に終わっていますが、これは基本方針への認識不足が理由です。月遅れの雑誌のような感覚と ピントはずれの陳情は交渉とは程遠いシロモノで、これらは基本線の認識がなく、失礼ながら誰が敵やら味方やらも弁えない情報不足が原因であろうかと思われます。

困るのは事実にもとる食言です。文責T とした7,5面談の報告書によれば、“支給の対象者として恩欠者、シベリア抑留者とその遺族 とあり、これは重大で、はたして左藤議員の口から本当に出たことか、またはT代表の創作か? 他の役員を介して確かめたところ完全な食言と判明しました。非力無理解は致し方がないとしても、嘘は禁物です。

4)、今回もその危惧を多分に含むように思います。400億は一旦国庫に返納し、それに上積みのうえ恩欠などを切り離して「シベリア抑留」の補償法案を採決すべし が我々の基本線ですが、この人は実利的な価値に目が眩んだのか、与党立法に肯定的で、左藤議員の扇動次第では促進の陳情でもやりだす心配があります。これでは相沢派と同じで、私はこの会の反動化を感じています。

5)、私はこの事態の円満解消を求め、石元事務局長とH副代表に話し合いの場を設けてほしいと依頼しましたが一向に捗らず、どうやら次期役員会に先送り、またお得意の会議ごっこを楽しまれることでしょう。

6)、そこでお願いですが、左藤議員へのアプローチは以後東京でやって頂けないか、恥をしのんでお願いする次第です。
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