第3章
  1、最高裁判決まで

  <その6> 永田町は数の世界だ               2003.9.24〜

鈴木善三氏との折衝不調の報告 相沢英之氏への書簡(案) アメリカ連邦最高裁の判決に想う
労働証明書を発行しなかったのはソ連だけか 「シベリア抑留は道理を正してのご審議を・・・。」 カマキリれぽーと18

鈴木善三氏との折衝不調の報告                2003.9.24.

予期したとおり約束の9月15日までには回答がないので、9月24日電話で意向を尋ねたところ、あまりにも甚だしい思考の溝は容易には埋まらず、遺憾ながらもの別れに終わってしまいました。

  1、  補償の責任はあくまでロシアにある。祖国である我が国からカネを取ろうなど     、そんなことは考えてもいない。だから補償をよこせの法案など真っ平である。

2、我々は捕虜ではなく抑留者である。ロシアも漸くそれが判ってきた。

3、捕虜ではロシアから補償が取れない。抑留者だからこそ人道的に要求できる。

4、いまは民間団体同士の交渉だが、近く政府間の問題になる。

5、平和条約までは待てないから、不法抑留補償を切り離して単独に要求する。

6、軍恩加算は他の協力がなくとも我々で推進して必ず成功させる。

7、長年の研究で立てた方針だ。四の五言わずに財団に加入されたい。

 以上を一方的にまくし立て、これでは話にならない。話の合間にいろいろと矛盾や誤謬を突いても聞く耳を持たない。“それでは相沢派は今度の補償法案には協力できない、反対である” と受け取ってよろしいか、世間にも公表しますが・・・・というと、“それは相沢に聞け、俺は知らない” と激昂して電話切れる。

 「モスクワセミナー」と称するナンセンスで可能性ゼロの会合を長々と、これに11年もカネを与え続けてやらせている国、操られる傀儡、こうして抑留者の要求を巧みにスポイルして時を稼ぐ。「シベリア抑留」は実に奥の深い伏魔殿である。

 同行の石元事務局長とも検討したが、選挙での相沢氏の当落を待って再考することにした。各位のご見解を伺いたい。

相沢派は「全国戦後強制抑留補償要求推進協議会中央連合会」と称していたが、1989年に国から5億円の基金を交付されて改名、以後「財団法人全国強制抑留者協会」となり、補償要求の4文字を見事に返上している。

     衆議院議員 相沢英之氏への書簡 1 (案)   2003.10.1.

 卒爾ながら貴方には選挙でお忙しい中、まことに恐縮ですが以下について貴意を伺いたく存じますので、ご回答下さいますようお願い申し上げます。

 私ら両名は「シベリア抑留」の正当な処遇を国に要望する組織の世話人でありますが、この度臨時国会に民主党が上程を予定する「戦時強制抑留者に対する特別給付金の支給に関する法律」採決について、貴方並びに主宰される財団法人挙げての協力をご依頼する次第であります。

 これにつきましては過日来 貴会の常務理事であられる鈴木善三氏を訪問し、逐一申し上げ、よしなにご検討の上回答をお願いしたのでありましたが、そのままに打ち過ぎ、先日の電話では “話は通してあるから、返事は直接相沢に聞くように” とのことで、斯様な仕儀になりましたことをご了承下さい。

 提唱とご依頼

1、ドイツ捕虜のこと

 先ず申し上げたいことの第一は 抑留地におけるドイツ兵の立派さです。彼らはソ連の言いなりには動かず、ニェットは毅然としてニェット。どのような脅しにも懲罰をも恐れず度々ストを敢行し、一糸乱れぬ統制の下で堂々とサボタージュをしていました。幾つにも分裂してお互いがせめぎ合い、ソ連に手玉に取られた我々の不甲斐なさに比べ、彼らの見事な振舞はさすがのソ連側も手を焼いて、一目置いたものでした。同胞あい争う悪い癖は残念ながらシベリアだけではありませんでした。意見と方法はそれぞれに違っても、どうして我々はもう一つ高い次元で手を結び、共闘出来なかったか、これを老獪な政府に乗ぜられ、“豆を煮るのに豆ガラをもって焚かれる” 結果となりました。

2、運動の原点に帰ろう

 元の鞘へ戻れ と言うのではありません、もう一度出発点まで引き返し出直そではありませんか。今度は意見の違いには触れないで、意見の合うことだけを一緒にやりましょう、力をあわせて・・・・

3、補償要求は宿願であり、運動の原点

 出発点とは1978年夏の姿です。全国統一の当初は素朴ではあれ初々しい希望に満ちた日々でした。そのときの旗印は 「戦時捕虜の補償要求と強制労働の賃金要求」で、いまと少しも変わりません。これこそが掛け値なしの本心で、皆の宿願ではないでしょうか。

4、補償法案は成立するのか

 民主党の法案は我々の非力な運動に比例して、決して満足できる内容ではありませんが、皆が待ち望んだ宿願が眼の前にあるのです。しかし過半数の賛成がないことには折角の補償も“絵に描いた餅”にすぎません。野党立法のため とても数が足りず、ここはどうしても与党自民党の票が必要です。

5、補償成立の鍵は貴方に

 貴方は「戦後強制抑留者の処遇改善に関する議員連盟」と言う自民党の有力な後ろ盾をお持ちです。若しこの方々の賛同を得られるならば、補償法案は成立するのですが、その鍵は相沢さん 貴方の手中にあります。

6、更なる運動の進展のために

 貧しい法案内容を太らせるためにも、より良い与党法案をつくる運動にも、貴方のノウハウと組織参加は大きな成果を生み、「シベリア抑留」は初めて歴史に正しく認知されるでしょう。また軍恩加算も出発点での目標の一つでありました。どうか残された僅かの時間にこれら世紀の総決算が 我々の手で果たされるようご尽力頂きたいのです。

 貴方は抑留者として唯一の国会議員であられ、期待と信頼を一身に担う方であります。共に黒パンを分け合い、苦難に耐えた戦友の悲願のために、また “補償が下りたのも相沢のお陰” と万人等しく称える声を花道とされるためにも、どうか賛同頂きたいのであります。

 戦後58年、我々は多くの友を失い、自らの時間も乏しくなりました。この最後の機会をすら失うならば、またもやドイツ兵との差の悔いに臍を噛むことになりましょう。

 ご回答をお待ちいたします。

  アメリカ連邦最高裁の判決に想う   <徳留絹枝さんへの書簡>

                                         2003.10.8.

 残念な結果でしたが私は “テニー教授は法律などを遥かに超えたところで、人間としてとっくに勝利している。” とのクーパー師の評価が心に残りました。

 ただ、審議にも入らず意見陳述の場もなし とは口惜しい法の隙間です。整っていると思ったアメリカでも手の及ばない隙間はあるのですね。

 先日、時効の成立を確かめた上で、過去の殺人を自白した服役中の男のことが報じられて話題を呼びました。自責の念か、自己顕示か、いづれにせよ自殺として処理された人の不幸な死因が明るみに出たのですが、私はすぐ三井鉱山を連想しました。脈絡がないようですが三井はこの際、潔く告白すべきだと思ったからです。三井の事実審理を免れ法の隙間に救われたような裁判での無罪は、この時効と似ていませんか。

 神ではない人間社会の仕組みの中で、法的にはなるほど無罪かもしれませんが、誰が考えても三井は罰せられるべきであります。果たして三井は赦されるでしょうか、社会によりも自分にであります。

 私は今からが問題ではないか と思うのです。法とはいえこの非情な判決をアメリカ世論がどう考えるか、また法律とは別の浄化装置がどのように作動し、どんな裁きを下すのか。私は海をへだてたスタンドから観戦したいと思います。

 テニー教授からは多くの贈り物を頂きました。これらの数々は私への晩年の宝物です。また運動にも「捕虜の個人請求権放棄」の確定や、「日本政府の内外捕虜への二重基準」などは私たち裁判への貴重な援軍となりましょう。

 なお、殺人を自殺と誤った検察は責任を問われそうですが、「ヘイデン法」を可決したカリフオルニャ州議会は批判を浴びるのかどうか、気になるところです。

 今年の彼岸花は10日ほど遅れました、お帰りの頃には良い紅葉をご覧になれるでしょう。

  労働証明書を発行しなかったのはソ連だけか      2003.10.7.

1、 序

 「・・・捕虜が属する国は、捕虜たる身分が終了した時に抑留国から捕虜に支払うべき貸方残高を当該捕虜に対して決済する責任を負う。」 

 これは1949年に制定されたジュネーヴ条約第66条であるが、この信念と実践は以前から国際的に慣習法として根付いていて、今次大戦にも適用され、連合国に抑留されていた捕虜はそれぞれ労働証明書を交付され、帰国時に賃金等貸方残高を受け取っている。

 その中で唯一発行しない例外がソ連であり、戦後58年を経た今に到るも「シベリア抑留」の捕虜のみ未払い賃金が支給されていない と言う不条理は周知の通りである。

 ところが発行していない国はソ連のみではなく、我国も連合軍抑留捕虜に対して一枚の労働証明書も渡していないのである。

 世界の良識に背を向けた日本とソ連の両国が共に1929年ジュネーヴ条約を批准しない人道後進国であったことは全くの偶然ではない。

2、 ソ連の解釈

 A) ソ連は抑留していた315万5千という膨大なドイツ捕虜に対しても発行した事実はない。なぜならドイツ捕虜による労役は公認の役務賠償であったからである。

 1945年2月のヤルタ会談により米、英、ソによって承認をみた「ドイツの現物賠償に関する議定書」第2項Cにおいて「ドイツ労働力の使用」が承認されているからである。従ってドイツ兵の強制労働は無償であり、ソ連にいちいち賃金証明をする必要はない。一方ドイツもこれがなくとも国と国民のために役務賠償の苦難に耐えた帰還捕虜を、民族の英雄として迎えて挙国的な補償を行ったのである。

 B) 「シベリア抑留」は不幸にもドイツの巻き添えを食った悲劇である。我が国に対してはこのような公認の取り決めは一切ないに拘わらず、スターリンは日本軍にもそのまま悪用し、連合国は連合国でその無法を黙視したのである。従って役務賠償のつもりのソ連が労働証明書を出す気はさらさらなく、兵士の膏血を絞り取ったあとは手ぶらのままで放り出したのである。

3、 日本の対応

 A) 国際孤児であった当時の日本は、はじめ労働証明書の持つ意味が判らぬまま、泣く子も黙る占領軍の命令には逆らえず、泣く泣くアメリカ帰還の捕虜に支払ったが、占領軍でもないイギリス帰りにまで払うのは忌々しいと “ 未払い賃金の支払いは元来捕虜を使用して利益を受けた抑留国が支払うのが当然” と難色を示した。ところがその回答を聞いて初めて目から鱗が落ち、支払人は所属国たる日本であることを始めて知ったのである。

 英国いわく “それなら日本軍の捕虜であった英国兵の未払い賃金はどうするつもりか?この方が10倍以上も多いが貴国はそれを払ってくれるのか。”

 大蔵省法規課は “日本も英国捕虜の賃金を支払っていないのだから、我が国兵士への支払いは日本政府がその責任を負うべきであろう” と初めて納得したのである。

 B) 捕虜の未払い賃金はその所属国で負担するのだ と言う義務を漸く理解した日本政府は、その以前(1947.3.18)既にソ連に対し受領証(労働証明書)の発行を要請している。言うところの「朝海文書」であるが、その要旨は “日本軍兵士が抑留の間に貯めた金銭並びに私物が取り上げられた場合にあっては、個々に正式の受領証を発行すべきである。” とし、“日本人引揚者がこれを持ち帰った場合にあっては、日本政府はソ連政府に代わって受領書に対し支払う。” と言うものである。

 但し滑稽であるのは “この支払金額は、ソ連領土ないしソ連管理地区からの物品の将来の輸入及び其の他の目的のため引き当てる。” であって、あくまで一時立替金のつもりであったのである。しかしながら誤解はともかく、日本政府は受領書(労働証明書)と引き換えにそれに表示された未払い賃金を支払う旨の確約は重要である。

 C) 「朝海文書」はソ連に対しての要請書であるのと同時に、労働証明書の提示があれば支払に応じると言うシベリア捕虜への契約書でもある。

 国はそのときソ連が応じなかったのを奇貨として、今に到るも着服したまま 支払おうともしないのは 著しく道義に反した行為である。

4、労働証明書を持たない捕虜に対する各国の対応

 A) 国際法や国際慣習法の無理解による日本政府の作為不作為は、連合軍捕虜たちに一枚の労働証明書をも渡さなかったが、それぞれ兵士の母国は彼らの受難にどのように酬いたであろうか、すべての国々が未払い賃金に代わるものとして手厚い補償金を支給し、その労をねぎらったことは、ここに記すまでもないことであろう。

 B) アメリカ捕虜は抑留中に蒙った損害の現状回復をはかる目的で制定された「戦争請求権法」により、帰還時に種々補償を受けているが、今回新たに「日本捕虜米兵請求解決法」が上程され、本年7月17日には上院を通過し 目下下院で審議されている。

 これは抑留中に強制労働の苦難に遭遇した元米兵捕虜が、日本企業に損害賠償を求めた訴えであったが、米連邦最高裁の認めるところとならず棄却されたが、国家責任の代償としての性質を持っている。サンフランシスコ条約により平和の回復と引き換えに個人請求権を放棄した国の責任として、被害者に酬いる1万ドルの補償法案であるが、この国では労働証明書の有無に拘わらず 半世紀を経た今日に到っても良心と正義の回復を具現しているのでる。

 C) 日本に抑留された元オランダ兵は国際赤十字社や母国からの補償だけでは納得が出来ないと、迫害された日本国を相手に損害賠償を訴えたが、2001.10.11の東京高裁はこれを棄却した。その理由の主たるものは “サンフランシスコ条約で貴方の請求権は放棄されていますから、私に支払いの義務はありませんよ” との日本政府側主張が勝ったのである。

 捕虜の請求権の補償は所属国の責任であって、抑留国の責任ではない のであるが、外の捕虜に支払わないなら、内の捕虜である「シベリア抑留」には払わなければならないが、これも嫌だと払わない。こんな道理に外れたことが白昼堂々まかり通っているのは奇怪千万と言わざるを得ない。

5、一片の紙切れがそれほど重要か

 労働証明書と言う一片の紙切れがあるから「シベリア抑留」が存在し、ないからそれは幻だというのであろうか? あろうがなかろうが 「シベリア抑留」はこの世に厳として存在しているのである。

 A)厳たる事実の前で労働証明書のあるなしを争うのはナンセンスである。

 B)自らが発行しない日本が 発行しないソ連を非難する資格はない。

 C)紙切れがなくとも各国は、厳たる事実に基づいて補償を行っている。

 D)内の捕虜にも外の捕虜にも 両方払わないとは、恥知らずの犯罪である。

 E)日本政府は「シベリア抑留」に即刻未払い賃金か それに代わる補償を行う以外、正義の回復はない。

 
 元米兵捕虜の訴えをアメリカ連邦最高裁が棄却した日に・・・・ 

「シベリア抑留」は道理を正してのご審議を・・・<坂口厚労大臣への提言>

                                         2003.10.10.

 「シベリア抑留」に関する未払い賃金問題について、平成15年10月3日衆議院厚生労働委員会での坂口厚生労働大臣の答弁にはいくつかの誤りがありますので、是正の上 どうか正しい判断に基づいた総合的な解決を切に要望いたします。

  答弁その1、 解決済とは・・・・

 “未払い賃金の決済には南方帰還者とその相手国の間には合意があって支払われたが、ソ連とはそれがなく、むしろ戦争中のことについては解決済ということになっているというような経緯から、現実問題として難しい・・・・”

 ソ連との戦争中のことについては解決済 とはどのような意味でしょうか?

 A) 未払い賃金のことであれば まだ解決されていないからこそ我々の訴えがあります。またこの問題は戦争中のことではなく、戦後に生じた事件でありますので、念のため。

 B) 支払いを受けるべき我々の知らない間に、日ソ両国で支払義務を免れる話し合いが結ばれたのであれば、それはいつ、どのようになされたのか、ご説明下さい。

 C) この解決済が実は誤りで、まだ未解決であるのならば、早急に支払がなされるようご配慮下さい。

答弁その2、  所属国か、抑留国か?

 “労働をさせたのがソ連であるから、本来なれば支払はロシアがしてくれるのが本当、それを日本にやれというのも本当は問題としておかしい”

 未払い賃金の支払人は抑留をして苦労をさせたソ連、即ち抑留国負担であり、捕虜所属国の日本ではない との御発言ですが、どうしてそうなのかの立証が必要であります。何故なら、これが本件の急所であるからです。「シベリア抑留」は一見難しい問題のように見えますが実は簡単で、未払い賃金を誰が払うか、抑留国か、所属国か、この二つのうち どちらかが判れば万事は解決です。大臣は抑留国ですが、我々は反対の所属国負担を主張しております。 その理由は

 A) 国際法、国債慣習法並びに平和条約や「日ソ共同宣言」など二国間協定で未払い賃金や貸方残高の最終支払人は所属国と定められ、世界の国々は忠実に実施しているからです。

  B) 我国でも南方帰還捕虜にはこの慣習法によって支払われています。

 C) 政府は「シベリア捕虜」には 個人請求権(未払い賃金請求)まで放棄した覚えはない といって支払わず、一方オランダやアメリカ捕虜の訴えには 放棄されている といって支払わず、つまり内にも外にも両方を拒否する二重基準を平気で行っています。

 D)大臣は “現実問題として難しい” といわれていますが、現実問題として支払われていないのは文明国中「シベリア捕虜」だけであります。

E) “ソ連がするのが本当” と思われるのなら、どうしてロシアに言われないのか。今までに抗議なり文句を言って下さったことは唯の一度もありません。

      *別紙の「労働証明書を発行しなかったのはソ連だけか」 をご覧下さい。

 大臣の抑留国負担説が立証されない時は、早急に政府支払立法を上程され、成立
にご尽力されんことを切望いたします。

答弁その3、  誰に施しを求めるのか

 “アメリカでも戦時中の日本人に対する差別等があって、それに対する補償をした経緯もあるから、これから先ロシアが考えてくれれば幸いと思う。”

 A) 戦時中にアメリカが不当な抑留や差別をしたのは「日本人」ではなく、「日系アメリカ人」ではありませんか?これは例として相応しくないようです。引例されるのであれば 目下アメリカ議会で審議中の、日本に抑留され強制労働を強いられた元米兵捕虜への1万ドル補償法案が適当かと思います。

 B) 人道的、道義的責任はともかく、「日ソ共同宣言」6項で個人請求権の放棄を受け、法的責任を免れたロシアが、これから先ロシアが考えてくれるほどお人好しには見えません。

 C) どの国も「シベリア抑留」に施しはしてくれないでしょう、これは我国自身が解決すべき問題であります。

答弁その4、 戦後処理問題懇談会について

 戦後処理懇談会報告書に“シベリアに補償をすると他の戦争犠牲者との間の均衡という観点から問題あり” として新たな政策的措置を講じないことになった。

 A) 実定的な未払い賃金を巡る問題は、他の戦争犠牲とは全く次元を異にする問題であります。

 B) この懇談会はときの官房長官の私的機関と聞いていますが、その報告書が憲法第98条の国際法規に関する問題を決定するほどの権威があるのでしょうか、それによる政府の解決済みとは独り合点の独りよがりに過ぎないのではありませんか。

 C) それに本件は戦争犠牲ではなく、戦後拉致により生じた賃金未払い問題であります。

 D) またこの報告書により成立した「平和祈念事業特別基金等に関する法律」はその付帯決議に “戦後強制抑留者に対する措置について、引き続き検討を行うこと” の一項があり、決して決着をみた処置とは考えておりません。

答弁その5、  

 最高裁は国に立法措置を求めたものではない という解釈等・・・・

 A) 心情的に同情すべきこと、人情的には何らかの形をしてあげたい・・・・というお気持ちは結構ですが、我々は同情も、してほしくもないのでありまして、国がなさねばならない義務と責任を強く求めているのです。

 B) “最高裁は立法措置を講ずることを必要とする・・・・” を求められているわけではない との解釈は遁辞であり、これは言葉の通り必要とされるべきであります。司法が法的に犠牲者を償うことが難しく、立法が必要というのであれば、行政、立法の府に於いて救済を講ずるのが民主主義三権分立の精神ではないでしょうか。

大臣へのお願い

 貴方の道義に基づくお考えや人道的なご勇断はかねがね満腔の敬意を表するものでありますが、どうしたことか「シベリア抑留」問題に限りご判断に翳りがあるように存ぜられます。世界で唯一つ、強制労働の賃金をその愛する祖国が、未だに支払わないと言う不条理を正されないとは、我々理解に苦しむ所であります。

貴方の兄上も我々同様 言われなき強請に骨身をやつされたとお考えでしょうか?

 労働証明書だけに拘っては難しい、総合的に考えるべき とは全く同感、どうか道理を正しての解決をまたと言わず早急にお考え賜りたく、心からお願い申し上げる次第であります。 

  カマキリれぽーと 18             2003.10.15.

 9月30日に最後のガーゼがとれ漸く全治のご宣託、早速半年振りの風呂を浴び、キューと一杯で生き返りました。病中励ましのお言葉やお見舞いなど、心から感謝厚くお礼申し上げます。その間も地球は回り、シベリア問題も目が回るほどの変化ですが、それらは速報5をご覧下さい。

1) 総選挙解散の国会嵐で補償法案の上程が、次の通常国会に延期となりましたが、それまでに法案の内容改善に最大の努力が必要です。遺族に漏れなく支給されるためには2000億が最低限の条件です。

2) 「シベリア問題」をライフワークに度々国会に取り上げて頂いた共産党の小沢和秋議員は、惜しくも今期で勇退されますが、最後の質疑となった国会議事録をご覧ください。今後もどなたかに引き続いて究明を願うための提案書も併せてご検討下さい。

3)自民、公明の与党対策と相沢派工作は、すべて選挙の結果待ち、暫くは永田町も休業です。

4)“日露平和条約締結の事前協議を加速・・・・” と新聞が報じていますが、いよいよ決着を付ける交渉の始まりです。「シベリア抑留」解決を内外に主張する最後のチャンス到来で、早速カマキリも所感を纏め、意見を新聞に投稿いたしました。

5)署名運動へのご協力、有難うございました。まだの方はどうか12月末の国会開催までにお送り下さい。法案採決促進に使用したいのです。

6)カマキリを主役に纏めた運動風景が8月15日にABCテレビで関西一円に放映され、多くの方々から感想が寄せられました。

7)いよいよ総選挙ですが、推進会議は立候補予定者の主な方々にはがきアンケート作戦を実施、其の他有力議員に向け協力要請など、補償法案の採決めざし努力中です。他のことは知らず、こと「シベリア抑留」問題での協力度に関しては野党三党が高く、壁になっているのが与党三党で、野党各党が少しでも増えてくれる方が有利です。

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